モーリス・ウィルクスが構想したロードローバーというクルマは、後に登場するレンジローバーほど徹底した形で悪路での走行性能を追求しようという意図はなく、単に舗装されていないでこぼこ道でもそれなりに快適に走れる乗用車、といった程度の軽いコンセプトに基づいて開発が始められました。

当初の予定では、ローバー社の小型セダン「P4」のシャシーに、ランドローバー用の頑丈な部品と軽量なアルミボディを搭載したもので、車体の形状は当時の用語で言う「エステート・カー(実用車)」、いわゆるステーション・ワゴンに近いものでした。ただし、エンジンはセダン用のローバー製2286ccエンジンをそのまま流用しており、駆動輪も四輪ではなく後輪の二輪だけで、でこぼこ道を外れた「オフロード」を自由自在に走れるような設計にはなっていませんでした。

1952年4月、ロードローバーの最初のプロトタイプが完成し、走行テストを開始します。開発担当のエンジニアたちは、この野心的なプロジェクトに熱中して、1956年には「ロードローバー シリーズII」と呼ばれる、より発展したプロトタイプを作り上げたものの、改良を加えるに従って車体の重量も増加し、製造コストも次第に大きくなってしまいました。

一方、ローバー社の販売部門は、このようなクルマの採算性には当初から疑問を抱いていました。道路を外れた荒地を、セダンで走ろうなどという酔狂な人がどれだけいるか、判断できなかったからです。悪路を走るのであれば、ランドローバーがあればいいじゃないか。ふつうの人なら、TPOに合わせて衣服を着替えるように、目的に合わせてセダンとランドローバーを乗り分けるだろう。

こうして、最初のロードローバー開発プロジェクトは「購買層の設定が不明瞭」との理由で、同社の経営陣によって1959年にいったん解消されてしまいます。このロードローバー構想が、ローバー社の社内で再び陽の目を見るまでには、それから7年間の月日を要することになるのです。

 


ロードローバー・シリーズIIのプロトタイプ。
どう見ても「道なき道を突っ走る」という感じのクルマではありません…。



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